仙台高等裁判所 昭和28年(う)115号 判決
本件起訴状によれば訴因の要旨は「被告人は昭和二十七年十月五日施行の福島県議会議員補欠選挙に際し同議員候補者鈴木省吾の選挙運動者であるが右候補者の選挙運動者である橋本庄太郎から同候補者のため投票取纏等の選挙運動方を依頼されその報酬及び投票取纏資金その他の運動費用として金二万円の供与を受けたものである」というに対し原判決はその理由において「被告人は福島県議会議員候補者鈴木省吾のため選挙運動をして居た橋本庄太郎に対し右候補者に当選を得しめるための選挙運動資金の供与方を申入れ該運動資金として金二万円の供与を受けた」旨判示し公職選挙法第二百二十一条第一項第四号を適用している、しかしながら選挙運動をなす者は選挙運動の費用の支弁を受けることができ、ただこれを支出するについて支出者側において政治資金規制法の制約を受けることになつているだけであるから若し供与を受けた金銭が選挙運動の費用であるならばそれは候補者に当選を得しめる目的で供与を受けたものであつても公職選挙法の罰則第二百二十一条には触れないのである。従つて本件公訴事実において供与金銭が訴因記載のように運動報酬であるか否かは公職選挙法第二百二十一条違反の犯罪を構成するか否かを決する重要な要件となるのであるに拘らず原判決はこの点について何等判断をせず単に橋本庄太郎より選挙運動資金として金二万円の供与を受けたと判示したのは犯罪の成否に関する要件について判断していないのであつて、この判示では公職選挙法第二百二十一条第一項第四号を適用して有罪の言渡をすることはできない。しかるに原判決が前掲判示事実に右法条を適用したのは判決の理由にくいちがいがあるものといわざるを得ないから原判決は破棄を免れない。
(後略)